【落とし穴】東京リーガルマインド事件-競業避止について知っておくべきこと

今回は、競業避止ついてみていきましょう。

転職が当たり前の世の中において、退職時に「競業避止に関する誓約書」を徴求する機会が増えているかと思います。

この誓約書ですが、みなさんはその効力についてどこまで知っていますか?そもそも、内容を全て把握していますか?

印鑑をもらっておけばOKと思っていたら、意外な落とし穴に落ちる危険があります。

実際に、競業避止義務契約が無効になった事例をみていきましょう。

東京リーガルマインド事件

東京地裁 平成7年10月16日判決

【主張】

AさんがL社を退職後に同業である別会社Xを設立したことに対し、L社は競業避止義務違反としてX社の運営差し止めを要求したが、Aさんは訴えの無効を主張した。

【経緯】

・AさんはL社の役員であり、役員任命時に誓約書を提出した。

・誓約書提出の1ヶ月後、従業員就業規則に「退職後2年間の競業避止義務」に関する条項を新設した。

・その半年後、役員就業規則にもほぼ同内容の「退職後2年間の競業避止義務」に関する条項を制定した。

・Aさんが退職することになったが、従業員就業規則において提出が義務付けされていた「秘密保持誓約書」を提出しなかった。代わりに、「L社と事前協議を行えば競業ができる」旨の覚書を提出した。

・AさんがL社を退職して1ヶ月後、L社の役員全員と事前協議のうえ、同業となるX社を設立した。

【なぜ会社は負けたのか?】

❌「事前協議を行えば競業ができる」を「事前に許可を得なければ競業できない」と自社に都合よく解釈していた。

 ➡︎競業するためには事前協議を「行う」だけでよく、「許可」や「同意」は不要で、仮に全員が反対しても覚書の内容は有効と判断

❌退職金の代替措置規定や減額規定がなかった。

 ➡︎退職金の支給を以て競業を防止したり、競業する場合は減額が認められる場合もあるが、これに関する規定がなかったため認められないと判断

【会社はどうすれば良かったのか?】

⭕️競業避止義務契約に関するポイントを整理し、会社にとって不利な点がないか専門家に相談する

⭕️労働法との関係を整理し、就業規則をはじめとする規程類と誓約書を一貫して整備する

労働契約の存続中、従業員には競業行為をしないようにする義務があります。

一方、退職後は職業選択の自由があるため、原則として競業行為を制約することはできません。

しかし、会社の営業秘密保護のため、

・制約の期間

・場所的範囲

・制限の対象となる職種の範囲

・代償の有無

などが合理的であれば、競合を制約する合意が有効と判断されます。(フォセコ・ジャパン事件 奈良地裁 昭和45年10月23日判決)

本件は、競合を防ぐために複数の制度を設け合意を交わしたため、通常であれば会社が勝ってもおかしくありませんでした。

しかし、問題は覚書の「事前に協議を行えば」という一言でした。

裁判所はこの文言に従って事前協議を行ったことを理由に、運営差し止めを認めませんでした。場合によっては、退職金制度を競業避止とうまく絡めお互いの利害を調整することもできましたが、L社の規程には充当する記載がなかったため、これも認められませんでした。

一見有効な文言に見えますが、意外な落とし穴にハマってしまった結果となり、会社は事前準備の労力と時間、裁判における時間・労力・コストを無駄にしてしまいました。

競業避止を設ける場合は、

就業規則、退職金規程、誓約書、覚書等の記載の細部にまでこだわり、各ルールに統一性と関連性を持たせる

ことが重要になってきます。

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