「副業OK」にする場合の就業規則の定め方と注意点

副業をしたいと考える従業員、副業OKとする企業が増えています。
そして、このような社会情勢の変化に伴い、厚生労働省が公表している「モデル就業規則も内容が改訂されています。

以下では、このモデルの条項を参考に、副業OKとする企業が注意すべき点などを解説していきます。

副業に関するモデル条項

モデル就業規則では従来、従業員の遵守事項として「許可を得ず副業をしない」などといった規定が置かれていました。しかし、近年この規定を削除し、副業に関する記述が改訂されています。

以下がその内容です。

第68条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

引用:https://www.mhlw.go.jp/content/000496428.pdf

この条項のポイント等を見ていきましょう。

原則として副業OKの姿勢(第1項)

第1項で、原則として副業を認めているのがポイントです。

企業が許可を与えて副業が可能になるとするのではなく、「基本的に副業はできる」とするところからスタートしています。

副業を制限できるケースを規定(第2項)

第2項では、副業を始めるにあたり届出を行うこと、そしてある一定の事由に該当する場合には制限ができる旨規定されています。

1号とは例えば以下のような場合です。

  • 副業が忙しくて自社の業務が十分に遂行できない
  • 長時間労働になってしまい、健康に悪影響が及ぶ

また、労働契約法では、企業は従業員が安全に労働できるようにすべきとされており、この「安全配慮義務」の観点からも1号の内容が重要といえます。

2~4号については主に従業員側が負う義務の問題です。

従業員には業務上の秘密を守る義務があり2号の内容を守らなければなりません。また、従業員の負う「誠実義務」に基づいて3号を、「競業避止義務」に基づいて4号の内容を守ることが求められます。
副業を行うことでこれらの義務に反する事態が発生しやすいため、制限できるケースとしてそれぞれ定めを置くのです。

就業規則に定めを置いてさえいれば何でも有効に機能するわけではありませんが、過去の裁判例でもこうした内容なら制限が認められると考えられています。ただし、拡大解釈し、必要以上に制限をかけてはいけませんし、この場合には裁判で無効とされてしまう可能性もあります。

就業規則の策定にあたって企業が行うこと

副業にも色んな形態があります。他の企業で雇用される場合と、フリーランスとして働いたり起業したりする場合も考えられます。

後者であれば、企業側が管理すべき事項は少なくて済むのですが、前者の場合には副業も含めた労働時間等の管理が求められます(労働基準法38条)。

第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

引用:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

そこで、従業員が届出をし、「副業先の事業内容」と「副業先での業務内容」が確認できる体制を整えましょう。

副業に関する裁判例

制限できる事由を定めたとしても、判断が明らかな場合を除いて、結局制限が認められるかどうかはケースバイケースです。そこで、以下の裁判例を参考にしましょう。

副業による解雇を有効とした裁判例

・東京地決-昭57年11月19日

毎日6時間、キャバレーで働いたことを理由として解雇された事例です。

当該就労は無断で行われており深夜にまで及ぶものであったため、余暇利用の域を超えると判断されています。結果、社会通念上、労務の提供に支障をきたす蓋然性が高く、解雇も有効とされています。

・名古屋地判-昭47年4月28日

管理職に就いている者が、競業他社で取締役として就任した事例です。

直接的に経営へ関与をしているわけではないものの、取締役への就任、とりわけ競業他社への就任は懲戒解雇事由に該当するとされ、解雇は有効になっています。

副業による解雇を無効とした裁判例

・東京地判-平20年12月5日

教授が語学学校の講師として従事しており、休講を理由に解雇された事例です。

当該教授は無許可で講師として働いていましたが、その副業は休日や夜間に行われており、本業に支障をきたしたとは認められず、解雇は無効と判断されています。

・東京地判-平13年6月5日

運送会社の運転手が貨物運送のアルバイトをして解雇された事例です。

当該運転手は年に1,2回のアルバイトをしており、職務専念の義務違反、信頼関係の破壊とまではいえないとして、解雇は無効と判断されています。

副業に関する条項を定めるときの注意点

ここではモデル就業規則を参考にその内容を解説してきました。多くの企業で共通する事項ですし、これらの内容を活用することは有効です。しかし、それだけでは不十分である場面も出てきます。そのため、モデルをそのまま流用するのではなく、自社の実態に即したものを策定するようにしましょう。

自社の従業員が副業する場合、どのようなリスクが生じ得るのかよく検討しなければいけません。

また、原則副業OKとした場合でも、従業員には事前の申告を求めることが望ましいです。そして自己申告をした者に対して、不利益がないように配慮することも大事です。社内ルール上、副業OKであったとしても、実際上言い出せない雰囲気があったのではだめです。

さらに、就業規則に定めた違反行為があったとみられる場合でも、職場への影響がないと思われる場合には懲戒処分はすべきではありません。よって、違反行為に関しても形式的に考えるのではなく、実質的な要素を考慮した上で慎重に判断することが大事です。

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